切実さとアンビルドの間で
Under 35 Architects exhibition 2015 レビュー
新建築住宅特集 2015年12月号
今年で6回目となるU-35展が開催された。今年は審査員である藤本壮介氏によって、25~35歳の建築家6人が選出された。佐藤研也は建築ともランドスケープとも見えるアイデアの断片を示し、高濱史子は自身の事務所を実寸で空間化した。植村遥はマテリアルとコンセプチュアルという両極を同時に展示。既に建つ郊外住宅と空気膜構造などのアンビルド建築を並列した北村直也、故郷の未来を力強いストーリーと精緻な模型で表現した岡田翔太郎の展示も目を引いた。中でも金田泰裕の展示は見応えがあった。構造家が大量の文章を展示し、そこから具体的な仕事の状況を想像させる仕掛けは、実物展示が難しい建築の展覧会の性質を最大化している。実施を前提としたプロジェクトとアンビルドのプロジェクトが混在した展示群からは、今35歳の筆者が普段の仕事で格闘 している「切実さ」は感じられなかった。それは、純度の高い建築の概念が展示されていることを意味する。しかし一方で、それらの概念がある歴史認識に基づいたものでなければ、滑稽に見えてしまうという 危うさも感じた。それは、個人の中身を露出しているにすぎないからだ。われわれが建築をつくる時、自らの建築が歴史の中にどのように位置づけられるかを 常に考えなければ行き先を見失うことになるだろう。 切実さとアンビルドの間で何をつくるべきかを考えさせられる展覧会であった。
(山口陽登)