(進行中)
輪郭が定まらない「運動体」とともにプログラムから考える
お互いの人格を尊重し、共に生き、あるがままを認め合う社会の実現を目指す建築を「宝塚福祉コミュニティプラザ」の一画に計画している。
それはさまざまな障壁により行きづらさを感じている障がい者だけでなく全ての人びとにとって、自身の力を発揮でき、生きるよろこびが追求される、自然な関係性の場である。
公益財団法人プラザ・コムの独力により生み出された「宝塚福祉コミュニティプラザ」は、かつて阪神大震災(1995年)で被災した人びとのための仮設住宅がつくられた場所である。震災をきっかけに、ボランティアの重要性に触れた設立者によってボランティアの広場「ぷらざこむ 1」(2002年)が建設された。また同年、高齢者と児童の世代間交流施設の「フレミラ宝塚」、障がいのある人とない人がともに働く場「こむの事業所」(2011年)が建設され、20年近くにわたり、さまざまな人びとが関わり、つくられ続けてきた。
あるがまま交流活動センター「あるでこむ 」とは、そのような長い時間をかけて醸成された主体性の群、100人を超えるボランティアの集まり「みんなでつくるプロジェクト」メンバーとともに生み出す、市民の手による公共空間である。
みんなでつくるプロジェクトは2016年11月に発足し、はじめに「あるでこむ 」が目指すべき理念・役割が考えられた。その後プロポーザルが行われ、2017年11月にわたしたちが設計者に選ばれた。そこからさらに1年の時間をかけ、スポーツ、文化・交流、店舗・作業所、経営といった複数の会議体に、デザイン、障がい者スポーツの専門家、ランドスケープといったメンバーを加え、多角的にあるでこむが必要とするプログラムを考えてきた。そして2018年現在、ぼんやりと浮かび上がりつつあるプログラムをどのように構成するか?メンバーと対話を繰り返しながら、多くの人を受け止めるような建築のあり方を探す地点に2年かけてたどり着いたところである。
関わる人すべてに専門性があり、それぞれが役割を探しながら行動し計画に関わっている。この建築の主体は、そのようなひとりひとりの個性が寄り集まって建築に携わるという、輪郭が定まらない「運動体」である。そのような主体の定まらなさが内臓されたような、社会との間に肌理細かなひだを持つ、小さな粒子の総体としての建築を考えたい。この地区に醸成された主体的な人と運動し続ける流動体としての街の間を繋ぐ、おおらかな抱擁感に満ちた建築になればと考えている。
(木村吉成+松本尚子+山口陽登+畑澤里香+大坪良樹)
所在地 | 兵庫県宝塚市 |
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用途 | 障がい者スポーツセンター+物販店舗+飲食店舗+シェアキッチン+事業所+オフィス+交流スペース |
構造・規模 | RC造 地下1階 地上3階建て |
建築面積 | 2,198㎡ |
延床面積 | 6,984㎡ |
敷地面積 | 3,727.58㎡ |
掲載 | 新建築 2018年12月号 |
共同設計 | 木村松本建築設計事務所 |
TEAM |
構造設計:満田衛資構造計画研究所 設備設計:ゼロ・アーキテクト・パートナーズ ランドスケープ:和想 デザイン:UMA / design farm |