Derailleur Brew Works 山ノ麓TAPROOM

Derailleur Brew Works 山ノ麓TAPROOM

自然と文明の変曲点に位置するビアスタンド

阪急箕面駅の駅ビル1Fに位置するクラフトビールのスタンドである。大阪市西成区の気鋭のクラフトビール工場・ディレイラブリューワークス直営のTAPROOMだ。

大阪駅から阪急宝塚線に乗り15分、石橋阪大前駅でローカル線の阪急箕面線に乗り換えて6分で到着する終着駅である。宝塚線と箕面線は1910年の箕面有馬電気軌道(現在の阪急電鉄)開業時からある鉄道で、箕面駅は最古の駅の1つである。かつては箕面動物園や箕面公会堂、観覧車などもあり、阪急の観光開発の象徴的な場所であったが、自然破壊の声が高まり、その後住宅地化していったという歴史を持つ。自然と文明の変曲点のような場所である。

背後には雄大な箕面山があり、現在は多くの登山客がこの場所から山登りを始める。箕面駅とその駅ビルは市街地と山のバウンダリーに位置し、鉄道を降りた瞬間から箕面山の一部に足を踏み入れている、とも言える。敷地は、南側の駅ビル内の屋外通路と北側道路の間に位置しており、北側道路はすでに箕面山の斜面が緩やかに始まっていて、750mm程度地面レベルが高かった。スタンドを設計するにあたり、単なる駅ビル内の店舗改装にとどまらず、箕面山という「自然」と鉄道という「文明」、そのどちらも感じられるような場所にしたいと考えた。

750mmのレベル差を150mmずつ上がっていく5つの床で緩やかに解消し、ひな壇状の断面構成としている。ビールと料理を提供する厨房兼カウンターは、スペースのど真ん中に配置し、できるだけ最小限のスペースとしている。駅から箕面山へ続く長い斜面の一部にポンっと置かれたようなこのカウンターの周りを、ビールを求めた登山客がぐるぐると回遊する。屋外通路に面したポリカ波板の建具、北側道路に面した木製建具は全面的に開かれ、スタンドと駅、スタンドと山の境界を弱めて、スタンドは斜面の一部となる。

また箕面山の一部から採集した自然の土と、西成のクラフトビール工場での製造過程で生まれた麦芽カスを混ぜて制作した版築のブロックをカウンターに使用している。ビールの製造工程と箕面山、その両方を感じ取りながら、クラフトビールを飲む。北側の壁面や厨房の天井は、アルミホイルをくしゃくしゃにして貼ったお手製のレフ板である。南北から入る自然光を拡散させ、明るい面を作り、箕面山に向かう視線を誘導している。

登山客は帰り道に、吸い込まれるようにして、このビアスタンドを訪れる。クラフトビールを飲みながら、こちらを見ればいま登り終えた山の斜面を感じ、あちらを見れば終着駅に向かってくる電車を眺めることができる。そのような、自然と文明の両方にオーバーラップするようなビアスタンドとなることを目指した。

商店建築 2023年10月号

所在地 大阪府箕面市箕面1-1-45
用途 立ち飲みスタンド+アトリエ
構造・規模 RC造 地上2階建てのうち地上1階部分
延床面積 76.39㎡
掲載 商店建築 2023年10月号
TEAM 施工:LOOWE.inc
照明:大光電機
スチール:bowlpond

運営:株式会社シクロ
アートディレクション:RYO OKAMOTO
PHOTO YOSUKE OHTAKE
MOVIE YOSUKE OHTAKE
Derailleur Brew Works 山ノ麓TAPROOM

安田株式会社 名古屋支店

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