大阪市立大学工学部 応用化学+バイオ工学 実験室棟 

大阪市立大学工学部 応用化学+バイオ工学 実験室棟 

既存キャンパスを読み取り、再定義する増築

大阪市立大学の工学部キャンパスに、実験室2室と付属する準備室2室を増築する計画。本キャンパスは、昭和39年にA,B,D棟が新築されてから、C,E,F,G棟と増築が繰り返されたキャンパスである。F棟は平成3年竣工、G棟は平成12年竣工と比較的新しい校舎で、中庭を敷地として建設された。その都度、キャンパス内に敷地を発見しながら、カリキュラムへの影響を最小限に建て増しが行われてきた。今回、D棟の老朽化、建て替えに伴い、応用化学実験室と準備室、バイオ工学実験室と準備室の合計4室を、既存不適格部分に訴求しないように配慮しながら、新たに敷地を発見し増築することが求められた。

とはいえ、中庭にはすでに2棟が建設されており、4室をまとめて建設するだけの敷地は残されていないように思えた。そこで、F棟の1Fのピロティを水平に広がる敷地として、また、中庭に残された空地を垂直方向にも広がる敷地として組み合わせ、異なる場所を横断するように「余地」を掻き集めて、本来なら有り得ない立体的な空地を敷地とすることとした。

限られた敷地の中で、貴重な中庭の開放感を失わないように南側に寄せて建物を配置した。視線の抜けを確保し、また必要な屋外の動線を確保するために建物を4つのヴォリュームに分けて、天井高の低いピロティには準備室を、ダクト配管のために十分な天井高が必要となる実験室はピロティ部を外して、全体として雁行するように配置した。暗く、学生の居場所になっていなかったF棟のピロティには準備室と実験室の明かりが灯り、また、出入り口を中庭に向かって多く配置することで、単なる空地ではなく、「通り」のように学生の活動の息吹が感じられるようになる。中庭に面するファサードはスチールカーテンウォールとし、外部空間から学生が学ぶ風景を見えるようにし、中庭の風景を一変させるように計画した。

2つの中庭を囲んで日の字型に配置された校舎群から見下ろされることに配慮して、屋根面を4つの外壁に次ぐ第5のファサードと位置付け、外壁面と一体のコールテン鋼板で仕上げている。コールテン表面の最終的な仕上げについては、錆促進剤の塗布も検討したが、結果何もせず、仮置きで生じた水溜りの跡や雨掛かりの有無も気にせず、信楽焼きのように偶然の表情を楽しむこととした。新しいピカピカの素材が、既存の古いキャンパスのなかで、浮いてしまわないように配慮した。

第5のファサードとしての屋根

実験室のため、実験用機器の室外機スペースが必要になる。既存校舎の多くは、中層建物のため、それらを屋上に配置している。しかし、本計画の建物は平屋で既存校舎から見下ろしでよく見えるため、屋根面を室外機スペースにすると、景観が損なわれてしまうことが予想された。そこで屋根面を「第5のファサード」と位置づけ、コールテン鋼の谷折れ屋根により雨水を集水しつつ、造形的な表情を持たせることを意図した。

既存に負担をかけないエキスパンションジョイント

既存建物に構造的な負担をかけないようにするため、30cm程度隙間を開けて実験室2室を増築している。また、雨を屋根で受ける必要がないピロティ部分には、既存建物から天井を吊り下げ室内化し、準備室2室を確保している。準備室の途中でエキスパンションジョイントによって、増築建物へと切り替わることで、新旧の空間をつなげている。

 

 

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IW傢飾雜誌 2022年9・10月号

IW傢飾雜誌 DETAIL 2023年号

 

所在地 大阪府大阪市住吉区
用途 大学(実験室+実験準備室)
構造・規模 S造 地上1階建て
建築面積 402.67㎡(増築部分)
延床面積 420.64㎡(増築部分)
敷地面積 66,911㎡
掲載 IW傢飾雜誌 2022年9・10月号
IW傢飾雜誌 DETAIL 2023年号
共同設計 宮本佳明/大阪市立大学建築学科建築デザイン研究室
上坂設計
TEAM 構造基本設計:片岡構造
施工:旭営繕建設(全体)+ナカミツ建工(コールテン鋼)
出展 2021年 ポストバブルの建築家展 ーかたちが語るときー
PHOTO KENTA HASEGAWA
大阪市立大学工学部 応用化学+バイオ工学 実験室棟 

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