修繕・復原・改善により歴史的価値を保全する耐震改修
兵庫県川西市に建つ旧黒川小学校の耐震改修を伴うリノベーションである。
旧黒川小学校は、北棟と南棟の2棟から構成されている。日本一の里山と言われる黒川地域のシンボルとして、永く小学校として利用されていたが、少子化に伴い休校となり、2023年に正式に廃校となった。雛壇状の地形の上段に建つ北棟は、明治37年(1904年)に建築された、兵庫県内でも最古級の木造校舎である。下段に建つ南棟は、戦後の昭和21年(1946年)に増築された。それら2棟が、里山の地形に馴染むように、平行に建っている。
2棟とも、片廊下形の教室配置で、日当たりの良い南側に教室が配置されていた。明治・昭和期の木造校舎が並置され、渡り廊下で接続されており、当時の学校建築の典型がよく保たれているため、兵庫県の「景観形成重要建造物」に指定されている。この歴史的建造物を、耐震改修しながら、周辺の豊富な里山資源を利用した木工・クラフト体験、ギャラリーやイベント利用できる多目的な場所にコンバージョンすることが求められた。また南側の校庭だった場所に新築された新築棟 をと併せた3つの建築で、里山散策の拠点と避難所機能を有する地域拠点に形成することが求められた。
耐震補強工事では、保有耐力計算により既存建物の耐震性能を評価した上で、劣化した部材の交換、部材接合部の補強、鉄筋コンクリート基礎及び新設柱、新設土壁の追加などを行った。
外観はかつての小学校の姿を復原し、景観の保全と修繕を重視した。一方、内部は、新しい使われ方を促すよう丁寧にかつ大胆にリノベーションを行った。北棟は歴史的価値も高く、なるべく当初のプランを維持しながら、耐震補強と修繕を行った。子ども達が出入りしていた昇降口は特別な場所であるため、棚による耐震補強を施した展示ギャラリーに改修した。南棟は、西側の教室の壁を撤去し、耐力壁となる袖壁を新設することで、緩やかに区切りられた大らかな一室空間へと改修した。地域の子供達を中心に、工作、調理、音楽イベントなどの多様な活動を許容する場所となることを目指した。
修繕・復原・改善を適材適所で組み合わせながら、里山と小学校の風景を現代に残す。歴史的建造物の価値に向き合った、現代と過去を結び直す耐震改修のプロジェクトである。
| 所在地 | 兵庫県川西市 |
|---|---|
| 用途 | 公民館 |
| 構造・規模 | 木造 地上1階建て |
| 建築面積 | 北棟:277.12㎡+南棟:249.25㎡+その他倉庫等:88.42㎡ |
| 延床面積 | 北棟:272.56㎡+南棟:244.28㎡+その他倉庫等:72.40㎡ |
| 敷地面積 | 2,644.02㎡ |
| 共同設計 |
エキスポ 木村松本建築設計事務所 |
| TEAM |
構造設計:満田衛資構造計画研究所 設備設計:幹設備設計事務所 施工:一吉工業 |
| PHOTO | Nobutada Omote |